無題ドキュメント

Special Interview 04

Special Interview
プロポーズ新拡張セット『空気クリア』

「聞こえるかい?」「僕はここだよ」「結婚しよう」 根暗なギャップが笑える プロポーズ新拡張セット『空気クリア』

daipo(ゲームデザイナー) × こだまじゅんじろう(ClaGla) × センバ ノブユキ(ClaGla)

大ヒットした「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」は、 拡張セット「ラバーズピンク」と「ストーカーブラック」に続き、 新拡張セット「空気クリア」をリリース。 「プロポーズ」がいかにして生まれたか?どんな思いで作られているのか? ゲームデザイナーのdaipo氏とClaGlaの2人に制作秘話を伺いました。

始まりは、手作業で作った17個の「プロポーズ」

先日「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。(以下「プロポーズ」)」の新しい拡張セット「空気クリア」が発売されましたが、そもそも「プロポーズ」を最初に作ったのはいつ頃ですか?

daipo 2017年ですね。最初の年は17個、翌年には箱を大きくして250個作りました。

両方ともゲームマーケットに向けて作っていたんですか?

daipo そうです。当時はすべて手作業で、指輪も1個ずつ瞬間接着剤で宝石を付けていました。

当初はプリンターで作ったと聞きました。

daipo 自宅のプリンターで出力して、裁断して詰めていったので17個しか作れませんでした。セット自体は50個作れる材料があったんですけど、間に合わなかったんですよね。懐かしいです。

そしてClaGlaから「プロポーズ」をリリースしたのが…。

こだま 2018年の12月。

daipo 秋のゲームマーケットです。

実際にいろいろな賞を受賞したんですよね?

daipo 一番うれしかったのは、この時のゲームマーケットの優秀作品賞ですね。

それからすごい大人気ゲームになったわけですが、ここまでの経緯をどう感じていますか?

daipo 正直こんなに反響があるとは思っていなかったんですよね。これは自分がやりたいから作ったので、じわじわ広がっていけばいいかなと思っていたけど、こんなにいきなり広まるとは思っていませんでした。なので、戸惑いの方が大きく、ずっと夢を見ているようで現実感がなかったです。

周囲やご自身の中で変化はありましたか?

daipo ホント人生変わったくらいのレベルで変化がありました。今年からフリーランスになったんですけど、会社を辞めるきっかけにもなりましたし。ゲームに足を向けて寝られないというか、もちろん、こだまさんにも感謝しています。

ClaGlaが「プロポーズ」を出すことになった経緯は?

こだま daipo氏がこれを作ったとき、「このゲーム面白いよ」と断言してたんです。僕は当時ゲームカフェで働いていたんですけど、まあ反響がすごいし、みんな爆笑してるし、なにより僕自身すごく楽しかった。で、「これは人気出ますよ。どこかゲーム会社から出した方がいいんじゃない?」って話したら、daipo氏は「じゃあこだまさんプロデュースしてよ」と言って…。

daipo こだまさんがすごくプッシュしてくれたので、いけるんじゃないかと。もちろんセンバくんも一緒に、はい。

こだま そうこうしているうち、ひょんなことから起業に向けての投資の話があり、先方から「君は会社で何をやりたいんだ?」という話になったとき、「僕は『プロポーズ』を作りたいです」と主張し、投資されたお金と自己資本も加えて「プロポーズ」のClaGla版を作りました。

そういう意味では、「プロポーズ」がClaGlaのスタートになったわけですね。

こだま そうです。あの日は一生忘れないですね。夢に見そうなくらい超絶長い一日で、まだ終わらないくらいの一日っていう感じでした。

攻めた拡張版「ブラック」と「ピンク」

そして、それを受けて拡張版をリリース。拡張版は、当初から予定されていたんですか?

daipo 当初は考えていませんでしたが、これがTwitterで話題になった辺りで、次に何か出したいなと考え、拡張版の製作に取りかかりました。もともと拡張しやすいゲームなので、拡張版の構想はあるにはありました。

名称とコンセプトが面白いですよね。

daipo 最初はコンセプトなしで、拡張版第1弾、第2弾みたいにするつもりでしたが、色分けして出したいなと考え、その色に合ったコンセプトを付けたら選ぶ側も面白いかなと思ったんです。

2タイトル同時リリースに相当こだわったと聞きました。

daipo はい、実はポケモンに憧れがありまして…。ポケモンって、出るたびにどの色にしようか迷うじゃないですか。そんな感じにしたかったんですよね。

拡張版によってゲームの広がりも増えてきている?

daipo はい。やっぱり何度も遊んでいくうちに慣れちゃうというか飽きちゃう部分もあるので、拡張が必要だなとは思っていました。

こだま 前の拡張版で問題が一つあったんですよ。「ストーカーブラック」っていうタイトルが映倫の映像審査に引っかかり、タイトルを変更してください、または例文を変えてくださいという要請があったけど断りました。うちのモットーは、クリエイターを大切にする会社。クリエイターのやりたい方向をねじ曲げるようなことはしたくないと思っているので。

映倫? 例文?

daipo ゲームマーケットのHPにゲームの中身を使った例文をいくつかあげていたんですけど、その中の一つが過激すぎるという話で、その例文を削除しなさいって要請があったんです。

こだま 最初タイトルも変えてくれって言われましたが、それは無理ですと。その結果、大手販売店さんのコンプライアンスに引っかかってしまい、そこは取り扱っていただいておりません。

センバ タイトルがとがっていたから話題になったっていうのもありますよね。

存在感の薄い人間をイメージした「空気クリア」

タイトルのセンスの良さを感じますね。で、これで完結と思ったらまた拡張版が出ると。

daipo はい、今回は「空気クリア」というタイトルで、存在感の薄い人間をイメージした単語が中にたくさん入っています。

こだま ほとんど透明で見えない(笑)。

daipo クラスにいても気づかれないような人のイメージの単語を選定しました。たとえば「地味な」とか「見えないかい?」とか「影が薄い」とか「ここだよ」とか「透明人間」とか「ちゃんと見てよ」とか「根暗な」とか「人知れず」とか…。

よりちょっと切実なプロポーズが作れる感じですね。

daipo そうですね。かなりクラスカーストの低い人をイメージした感じの内容です。

拡張版は「ラバーズピンク」「ストーカーブラック」ときて、今回「空気クリア」だったのはどうしてですか?

daipo 拡張セットの内容はいくつか考えていて、次出すならこのような内容のものが求められているのではないかなと勝手に思い、このタイミングで「空気クリア」を出すことにしました。テイストとしては「ブラック」に近い雰囲気。「ブラック」は自分の気持ちを相手に向けているんですけど、「空気クリア」は自分の気持ちをうちに向けていて、ベクトルとしては近いと思います。

今回はどういうところに気を使いましたか?

daipo 基本セットのどの単語にはめても面白くなるように気を使い、単語の選定に関してはかなりギリギリまでやらせていただきました。最終的には30単語くらい変更しましたね。

その30はどういうところが引っかかったんですか?

daipo テストプレイを何度も繰り返して遊ぶんですけど、やっぱり使いづらいんじゃないかって意見が出たものを全部省いて、面白いんじゃないかと思われるものを入れて、またテストプレイして…これなら大丈夫だなと思ったものがこちらになります。

言葉の作り方的に今回意識されたことは?

daipo 何かこう詩的な感じにしたかったんですね。ちょっとおしゃれな感じというか。なのでいろんな曲の歌詞をたくさん見て研究しました。あとプロポーズの本などを買って勉強したり、ですね。

ほかにもいろんなところに注力して作られている感じがしますけど…。

daipo 基本はこれまで出たものの色替えなので、アートワークに関しては迷わずやったんですけど、我々の中でも色をどうするかという意見が度々出て、最終的にこの黄色と青の色に落ち着きました

どういう意見が出たんですか?

daipo 最初「空気クリア」というイメージから青ベースで作っていましたが、全体的に青いイメージでちょっと寂しいんじゃないか、差し色を入れた方がいいのではという意見が出て、いろいろ試行錯誤しました。

花の色が2色になっているのは初めてなんですね?

daipo 確かにそうですね。差し色で花に入れたのは初めて。背景のチェック柄は絶対やりたかったんです。これAdobeのPhotoshopでは透明の意味なんですよね。見る人によっては、これ透明にしか見えないんです。

「空気クリア」ってネーミングはどのように生まれたんですか?

daipo えーと、なんか降ってきたというか、語感がおしゃれだなって思ったんです。いろいろ考えて、「空気クリア」合わせで単語を選定していったところもあり…なんかいいなと思ったのが始まり。なんとなく自分の中にあったものが、ふっと湧いて出たって感じですね。

「空気クリア」がタイトルになって、ビジュアルが透明になると…。

daipo アイコンのハートも透明にしました。

センバ 指輪も透明。すごくきれいなんですよね。

今回の製作で苦労されたことはありましたか?

daipo 言葉の選定は本当に苦労しました。今まででいちばん時間がかかったと思います。採用したのは約80単語ですが、たぶん3倍くらい候補を出しました。

ClaGlaのお二人は、製作段階でどんなことを感じましたか?

センバ 「空気クリア」って何だ? そうくるのかーって思いつつ、daipo氏独特の展開だなと思いました。

こだま 何か違う色だと思っていたら、クリアで来たんだ!と思いましたね。

センバ 3作目からいきなり変化球でいくんだって思って…。

daipo そうですね。ただ無限に出せるとは思ってなくて、「プロポーズ」で出せる単語ってある程度限られてくるので、拡張版を出せる数もそれほど多くはないなと。無理矢理出してしまうとゲームのバランスが崩れてしまうんです。このゲームは大事にしていきたいので、毎回一球入魂のつもりで取り組んでいます。

こだま daipo 氏が言葉のセレクションに気を使っているのは僕らも感じていて、テストプレイの段階で単語の調整を繰り返し、その経験値が活かされた拡張版になっているんじゃないかと感じています。

センバ 途中の段階では、これ意外と盛り上がらないなって言ってたことあったよね。

daipo それが本当に避けたい部分で、絶対どの単語が来ても盛り上がるっていうのが目標です。

そう考えると「空気クリア」って、テーマとしてちょっと難しいんですかね?

こだま と、思うじゃないですか?これが例文を見ると…。

daipo 結構根暗なキャラを作りやすいっていうのがあるので、笑える方向に持っていきやすいんです。

こだま ギャップがあるんですよね。たとえば「聞いてるかい?」「僕はここだよ」というところから「結婚しよう」という、いわゆるギャップ感。

「プロポーズ」がすごい人気作品になって、この拡張版を作る際にプレッシャーみたいなものはありましたか?

daipo そうですね。楽しみにしてくれている人はいると思うので、期待を裏切らないようにしたいな、というのはあります。今回買ったけどいまいち面白くなかったから次回は買わなくていいかなとか、そういうことにならないようにクオリティは保っていきたいとは思います。

新たな拡張版が始動、「プロポーズ」は次の章へ

拡張版自体はこれで終わりではない?

daipo はい、まだ考えています。

センバ あの話した方がいいのかな?「ゆこる」のやつ。

daipo あ、そうですね。正式な拡張版のほかにライトなミニ拡張版を製作中で、「ナゾグラVer.」「ゆこるVer.」という各24枚入り。こちらはコラボ商品というイメージなので、割と気楽に、楽しんで作れる内容ですね。絶対にプロポーズに使える言葉じゃなきゃいけないってわけではなく、選べる単語の幅が広がって楽しく選定させていただきました。 ※2020年11月6日よりSapporoGameSpaceにて販売中。

たとえばどんな感じですか?

daipo たとえば「ナゾグラ」は謎解きのお店なので、謎っぽい言葉を選定。「ゆこる」の方は、札幌や北海道感のある言葉を選定しました。ミニ拡張版は、ほかにもコラボできるところがあれば、今後もやってみたいなと思っています。

違う新しい展開が出てくるんですね。

こだま 僕らがお店を作って、お店に来てくれた人へのホスピタリティとして、ここでしか手に入らない持って帰れる特別なお土産みたいなものを作りたいなと思い、daipo氏に相談したところ、いいねいいねと話が進みました。

一気にそれっぽくなりますね。その店っぽい「プロポーズ」に。

daipo 「ゆこる」はボードゲームのお店なので、アイコンは「ミープル」というボードゲームによく出てくる木のコマのおもちゃのカタチに。「ナゾグラ」のアイコンは、謎解きなのでクエスチョンにしました。

これからの展開が楽しみですね。

daipo はい、ホント楽しみです。パッケージにもすごいこだわって、キラキラとした印刷加工とピローケースタイプの箱は僕がどうしてもやりたくて、かなりいろいろ調べてもらいました。

ピローケースはなぜ?

daipo このカタチがかわいいじゃないですか。最初カードをただ束にするだけで売るっていう話もありましたが、それだと買う人がつまんないかなと。お土産とかでもらってもうれしいパッケージにしたかったんですね。

やっぱりお土産の特別感なんですね。

daipo そうですね。これだけ小さくてもキラキラしていると払える値段が心情的に変わってくると思うんです。高級感が出るようにキラキラは入れたかったですね。

daipo氏は「プロポーズ」を全部そろえて使われていくイメージはありますか?

daipo 全部混ぜて遊ぶというより、自分が好きなのを選んで遊んでもらえればいいかなと思ってますね。全部買ってそろえてと言うのは横暴だと思うので、自分の趣味に合うやつを選んで追加してもらえればいいなと思います。

ちなみに「プロポーズ」全編通して一番気を使ったこと、変わらず注力してることは?

daipo 誰が遊んでも、ある程度面白くなるような単語選びが一番気を使っているところですね。「プロポーズ」は大喜利ゲームってジャンルなんですけど、中には難しいゲームがあって、スキルがないと面白くならないものもたくさんあるんですよね。なので、これは面白さのスキルが低い人でも、カードを並べて組み合わせるだけで楽しめるものにしたいというのが根底にあり、そこはいつも気を使っています。

それとやっぱり追加していく方がだんだんと難しくなる?

daipo そうですね、やっぱり最初に作ったものがバランスがいいと思っていて、それにどんどん足していくことでバランスが悪くなっていい文章が作れなくなるのではという心配はあるので、そこはかなり慎重に追加するようにしています。

アートワーク自体の考え方はどうですか?

daipo 最初の頃、ゼクシィなど女性誌を参考にして優しい感じのデザインにしていたんですけど、すごくフェミニンな感じになってしまい、女性しか手に取ってもらえないんじゃないかって問題が出たんですね。アートワークに関しては、男女ともに手に取ってもらえるようなデザインを目指してこういう感じになっています。

パッケージもアートワークもすごくいいなと思っていて、部屋に飾っておけるデザインですよね。

daipo ありがとうございます。

こだま 僕らの箱にはテーマがあって、本棚に置いてほしかったんです。ほかのボードゲームは大きいので、ボードゲーム棚に置かなければならないけど、僕らがリーチしたいのはボードゲームが好きな人はもちろん、そうじゃない普通の人。そんな人たちにも手に取ってもらえたらうれしいなと思い、本棚に置いてもらうことを考えました。

そろえていく楽しさもあるんですね。

daipo そうです。同じ規格で作っているので並べたら壮観です。こだまさんは「もう1個出してほしい」と言ってますけど(笑)。

こだま そう、もう1個出して!早いうちに(笑)。

(インタビュアー:児玉源太郎)

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たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。 ─空気クリア─

ゲームデザイン/アートワーク:daipo(CRIMAGE)

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